図書館題

魔法と魔術、新たな力・魔導

【神から授かりし力・人の叡智の結晶】
魔法、魔術、魔導。3つの名は似通っていて、どうにもよく分からないという者は多いだろう。本書では、3つの違いを明確にし、読者の知識をより深める手助けになればと思う。
 
◆魔法とは Magia マギア
古アルク語表記…KoyraM (コイラム)
まず魔法について記述していく。魔法(Magic)とは、自己の魔力にルールを与え、様々な効果を出すものである。基本は魔法を使える種族(体内である程度安定した魔力を生成できる種)の血族が使えるが、まれに素質で使えない場合もある。人間や獣人族でも使える者がいるが、その場合は血族として先祖に魔力内包種族が交わっている可能性があると言えるだろう。
魔法を使用する者は、大体が主5属性(後述する)のうち1つの性質(属性)の全魔法を使える。魔術が計画的に使う汎用型だとすれば、魔法はまさに”授かり物”、素質と体質、技量次第でその属性のスペシャリストになれるという訳だ。
しかし内包する魔力が一定以上ある者のみ使えるという特性に加え、体内の魔力を練り上げ用途に応じて変換する感覚もまた個人の才に依存するため、現代において魔法士と認められるレベルの術者は数えるほどしか存在しない。これを読んでいるそこの君、運よくメイジに出会えたら仲間にしておいて損はないぞ。
 魔法を使う者…魔法士(Mage メイジ)
 ※5属性…炎属性 水属性 樹属性 光属性 闇属性
 
◆魔術とは Magicraft マギクラフト  古アルク語表記…UstujaM(アスタジャム)
次に魔術(Magicraft)であるが、こちらは魔法が使えない者が、使える者の能力を借り効果を出すものである。つまり、魔法があって初めて魔術が使えるのだ。(魔術においては契約者が必要、という点を考慮すれば『魔法使用者がいて初めて魔術を行使することが出来る』と言っても差し支えないだろう。)
1つ目の特徴として、魔力源が術者の身体ではなく外部に依存する。例えば、体内に豊富な魔力を持つ魔法使いと契約を結び、魔力を一時的に借りて使用する必要がある。
2つ目の特徴として『術式』と呼ばれる技術を用いて魔力を操作する。『魔法陣』をスクロール(巻物)に記し、呪文をかけておいたもの(略式術)を使用する他、口頭で使用場面・条件に合った呪文を詠唱する事で発動し、例えば「魔力を変換して炎を起こす」という場合はそれ専用の術式を使用する。先述の魔法使いとの契約には魔法陣の描写によって行われる。熟練してくると呪文を短縮化して行使する事も可能だが、そうそう身に着けられるものではない事は頭の片隅に入れておいた方がいいだろう。
 魔術を使う者…魔術士(Wizard ウィザード)魔術師(ArchWizard アークウィザード)
※前者は独学の者・ディーニア魔術学院在学生を、後者はディーニア魔術学院卒業資格試験合格または各国の認定魔術師資格試験を合格したものを指す。
※資料 詠唱術式において使用される要素の例 契約したメイジの名前(頭文字を組み込む事が多い。)、使用用途の定義・または特徴や様態を表す呪文、使用した精霊石名(精霊石を用いる場合)
例1 ネ・フレイム・エルプツィオン (メイジの名の頭文字・様態・使用用途の定義)火炎が噴火するように広がるよう指示している。

 Ne Frame Eruption

例2 タンザナイト・ク・ヴィアベル (使用した精霊石名・メイジの名の頭文字・使用用途の定義)水の渦を起こすよう指示している。

 Tanzanite Ku Wirbel

●魔法薬
魔術と薬学を昇華させ、回復や能力向上の薬として使えるようにしたものが魔法薬である。読者にとっても身近なものではないだろうか。 薬師が私たちに処方する、不快な味がするアレである。(魔法薬学研究が進むにつれ年々飲みやすく改善されてはいるが…昔は酷かった。) こちらは主に、ハーブ等を調合した薬に呪文詠唱し、薬としての性能を安定・身体への負担を軽減する。呪文には使用したハーブの特性等が織り込まれる場合が多い。 技法としては魔術の一種であるが、使用方法が大きく異なるためディーニア魔術学院では別の学科として扱っている。
 魔法薬学を使う者…薬師(Magichemist マギケミスト)
 
◆魔導とは Magiarts マギアーツ
近代において大きな変化といえるであろう、『魔機』の定義確立。力なき人の創りしこの技術を要約すると、魔石を(魔力の代替となる)機械で変換し(こちらは術式)魔法・魔術に近いものを発出する技術である。 魔術の誕生から長い年月が経ち、様々な系統の魔術が成立していく中で、現代において急速に勢力を増している体系。 「体内の魔力量がゼロに等しいものには行使できない」「術式の展開には時間を要する」という魔術の二つの欠点を排除すべく、魔力のリソースを魔石など体外の物質に置き換え、詠唱や魔文といった術式の代わりに魔力を変換する機械を用いる。この特殊な機械を魔機、魔機を製造・加工する者を魔導技師(MagiartsEngineer・マギアーツ エンジニア)と呼ぶ。 ​
純粋な魔法と異なり融通が利かないとされる魔術と比べても更に応用が利かない技法ではあるが、魔法や魔術の才が無くとも扱える事と、何より魔機を使用するだけなら専門的な知識は一切必要なく、機械を操作するだけで魔術に匹敵する効果を発揮する事から、軍事利用のリスクが懸念されている。 魔術学会などからは異端として強く弾圧されており、研究や利用を禁止している国もある。
魔機を使う者… 魔導操士(SorceLot ソーサロット)
 
◆おわりに
日々の暮らしにおいて、これらとの関わりが少ない者にとって、本書は非常に面倒で理解しにくいものであっただろう。まずは読者に感謝の意と、私からの労いを示したい。 しかしこの瞬間、貴方は力と出会い、どう使用するかの大枠を学んだのだ。実用面でも娯楽の面でもいい、ぜひ生活の糧にして頂きたい。一番重要な言葉は今、読者へお伝えしよう。 どんな力を知り、それを身に着けようと、その力は貴方ひとりの為に使わないで欲しい。 何を得るのか失うのか、貴方の心で充分悩んで、美しきアルクレシアの一員として読者たちと手を取り合いたい。
私のエゴが、読者のエゴである事を願っている。
創歴 495年 4月 12日 著者
Ingvar  Sejdelia
設定  Ako Ishal Mooper Scarlet 
執筆  Ako Ishal