「創作者さん、よくいらして下さいましたね。」
辺りを包んでいた光が消えると、純白の翼をゆらりとはためかせて小柄な少女が姿を現わした。
初めて踏みしめる地で見慣れない景色を見渡す”創作者”に、少女は優しく声をかける。
「私の導きに応えていただきありがとうございます。突然で申し訳ないのですが・・・私たちの世界を救うため、あなたの力が必要なのです」
一体何をやらされるんだ。世界征服を企む魔王とでも戦うのだろうか。
とでも言わんばかりに目を白黒させる様を見て、少女がクスリと笑みを浮かべる。
「ふふっ、ごめんなさい…皆さん必ずこういう反応するので、面白くていつも説明省いちゃうんですよねぇ。
厳密には、あなたの手掛ける作品と、それらを創作するあなたの技術と知恵をお借りしたいのです。
難しい事は考えなくても大丈夫ですよぉ、この世界の人々があなたの作品と触れ合う事が、ゆくゆくはこの世界の未来を守ることに繋がるので。
それに・・・創作者様にとっても商談の機会が増えるのは悪い話じゃないはずですよねぇ」
いたずらっぽい少女に多少の疑念は抱きつつも、創作者は首を縦に振った。
「うんうん。来てくれると信じていましたよ。
私、元の世界にいるあなたの事ずーーっと見てましたから…きっと興味を持ってもらえるだろうなあって。
あ、もし帰りたくなったら、あなたが望めば私イシュナキルが責任を持って元の世界へ送り届けますのでご心配無く。
でも、もしこの地を気に入ってくださったなら…あなたが望めば何度でもまた迎えに行きますよ…どこの世界のどんな所にいても、私ずーーーーーーっとあなたのこと見てますから……んふふ、冗談ですよぉ。
あ、そうそう、ここで私と出会った事はこれから出会う方々には内緒にしておいてくださいね。
あなたが元居た世界の事も、しーーっ、ですよ。」
少女が手にしたランタンを掲げると、再び光輝く扉が現れた。
「それでは改めまして・・・ようこそ、アルクレシアへ。」